「っへくし…」
「春瑠、風邪?」
「んー…ぽい つか、なんか目、しょぼしょぼする」
「分かる分かる 風邪の時ってなるよねー」
「つかさ、聞く所によるとこの時期も花粉飛んでんだって、稲の」
「え、春瑠って稲花粉じゃなかったっけ…?」
ずず、と鼻を鳴らしながら、春瑠はそうだよと返事をした
「杉と檜も微妙な感じ」
「じゃあそれ、風邪じゃなくて、花粉症なんじゃないの?」
「んー…どうだろ でも仮にこれ花粉症なら、俺、花粉症じゃない時期、梅雨明けから11月中旬までだけ」
「まじですか」
「まーじですよー 自然ってホント、残酷だよね」
門から校舎へと続く道を自転車で走りながら、春瑠は溜め息にも似た吐息を洩らした
春瑠の後ろに乗り、同情の眼差しを向けていた湊都があっと、小さな声を出した
「どーかした?」
「今日、部活で朝早く来いって言われてた」
「あーらら」
「……ま、いいか」
「いいのか」
「うん」
「そか おし、着いた」
「ありがと」
「どーいたしまして さて、頑張りますか」
じゃあまた、と校舎の異なる2人は別れた
「はーる、起きろ」
「…、なに? 久司」
「移動 次、体育だから」
「はぁーい」
春瑠はよいしょ、と立ち上がった
既に着替えを済ませた久司の横で更衣を始める
「今日からテニスだな」
「卓球のが良い?」
「んー…テニスよりは卓球だけど、やっぱ水泳がいちばん」
「ホント好きだね 今日は部活…?」
「あるよー 部活ってゆーより、自主練みたいなもんだけど」
「がんばんなさい」
「春瑠もね」
更衣を済ませ、教室から出ると背後から大きな声が聞こえた(つか、廊下で大声出すな)
「おにーちゃーーーーんっ」
「ぐぉ、…ちょ、抱きつくな」
「おにいちゃんおにいちゃんおにいちゃん」
「うぜー… つか、久司は隼人の兄ちゃんじゃないだろ」
「ひでぇ、はるはるひでぇ」
「…なに、隼人」
「辞書かしてぇー 英語、英語の辞書ー!!!」
「あー…机ン中入ってるから、勝手に持ってって」
「ありがとぉぉぉおおおおおおお」
隼人は脱兎の如く我が物顔で4組の教室に入り(※隼人は6組です)、久司の机の中を探った
久司と春瑠は隼人が教室に入るや否や、廊下を歩き始めた
が。
背後から再び大きな声が聞こえた(だから、廊下で大声出すなって)
「おにーちゃん!!! 入って無いよ!!! 机ン中」
「マジで? んー…あ、そういや貸した さっきの時間」
「えぇぇぇええええええええマジでぇぇぇええええええええ…………、は」
「残念ながら、俺も貸し出し中」
久司が辞書を持っていないと判明した途端、春瑠に期待をこめた眼差しを向けた隼人だったが
呆気なく断られ(だって貸してまだ帰ってきてないんだから仕方無い)、しょんぼりと肩を落とした
「凌なら持ってんじゃねーの?」
「湊都も持ってそうだよね」
「しのしのもみなも捕まんなかった」
「ま、自業自得だろ つか、久司、もうやべぇ」
「え…ぁ、ホント ごめん、隼人 もう行かないと」
「あー、うん 2人とも、ありがと」
「課題くらい手伝ってやらなくもねーぞ」
「ホント?! はるはるだいすきーww」
「ただ、俺の英語は壊滅的と言っても過言ではない ま、隼人よりマシかもだけど」
「ぅ……イイデスジブンノチカラダケデヤルコトニシマス」
「おーがんばれー」
「頑張って、隼人」
「じゃあな 久司、ダッシュ!!」
「またお昼に」
ひらひらと手を振って春瑠と久司を見送った隼人は
2人の姿が見えなくなった途端、どうしようやっぱり課題は嫌だしでも辞書ないし…と頭を抱えた
「なにしてんの、そんなとこで」
と、頭上から声が聞こえた
隼人が顔を上げると、目の前にうんざりした様子で凌が立っていた
「しのしのぉぉぉぉおおおおおおお」
「わっ、ちょ、急に顔近付けないでよ」
「ご、ごめ……」
「どうかしたの?」
「辞書…、英語の辞書、持ってない?」
「あぁ、忘れたの 持ってるよ」
「貸してくれっ!!!」
「別に良いけど」
「ありがとぉぉぉおおおおお だいすき、ほんっとだいすき、しのしの!!!」
「安っぽいなー」
隼人は凌にべったりと引っ付き(凌にうっとうしがられ)ながら、2人は5組に向った
<2008.12.08 お粗末さまでした>