全ては奴の一言から始まった。
     
     
     
     
     
     
     
     「明日みんなでお泊まり会しようぜー!」
     「「「「は・・・?」」」」
     
     昼休み。5人はいつものように一緒に昼食を食べていた。
     その唐突な声が発されたのは、皆ほぼ食べ終わり、穏やかな時間が流れていた矢先のこと。
     
     「だからーお泊まり会やろうぜって!みなん家で!」
     「ちょっと待て。何で勝手に俺の家とか決めてんだよ。」
     「だってみなん家広いじゃん。」
     「そういう問題じゃねぇ。」
     「じゃあどういう問題なんだよ!」
     
     また始まった・・・そんな声が聞こえてきそうな雰囲気である。
     実際他の3人は心の中で呟いているだろうが。
     
     「なぁしのしのもやりたいよなー!?」
     「え、オレ?オレは別「ほらやりたいって!しのしのの願いを無下にする気かよー!」
     「・・・オレ、何も言ってない・・・。」
     
     隼人は凌の言葉を遮り、勝手に言っている。
     しかしそれに騙される湊都ではない。
     
     「いいじゃん、おもしろそうだし。」
     「ひさ・・・。」
     「今回だけはこのアホに賛同してやろうかな。」
     「はるまで・・・。」
     
     
     
     
     「わかったよ、一部屋貸してやる。」
     
     さすがに皆に言われて断るほど、湊都も鬼ではない。
     しぶしぶ承諾せざるを得なかった。
     隼人以外の4人に対してはつくづく甘い湊都である。
     
     「やったーみなありがとー!」
     「いや・・・」
     「んじゃ時間決めないと!みなは何時からなら大丈夫?」
     「明日だよな。明日はレッスンがあるから21時以降だな。」
     「じゃあ21時にみなん家集合ー!」
     
     
     かくして三条家でのお泊まり会が決行されることとなった。
     
     
     
     
     
     
     昨日の一悶着から一日が経った。
     
     皆それぞれに一日を過ごし、集合の21時が近づこうとしている。
     
     湊都の家の前に既に集まっているのは4人。家人である湊都は当たり前だがいる。
     すると一人足りていないのはまるわかりだ。
     
     「あのバカは?」
     「ハヤトなら10分遅れるって。」
     「出た、隼人の得意技。必殺10分遅刻!」
     「ホント、救いようのねぇバカだな。」
     
     隼人は待ち合わせとなると、何故かぴったり10分遅刻してくる。
     世の中には学習能力というものが存在するが、そんな代物を隼人は持ち合わせていないようだ。
     
     
     「はぁ。あのバカはほっといてとりあえず中に入るか。お茶入れる。」
     
     そう言って通されたのは綺麗に整えられた応接間。
     
     アンティークが並び、調度品も素人目で見ても高いことがわかるものばかりである。
     
     「相変わらずすげー家だな。前より増えてないか?」
     「母さんの趣味だよ。海外に行く度に買ってくる。おかげで物が増えて困るよ。」
     
     はぁ、と今日幾度目かのため息をついて、所狭しと並べられたもの達を見る。
     本当に増えた。
     
     出された紅茶とお菓子を口にしながら、皆それぞれ部屋を見渡していた。
     すると久司が思いついたように湊都に声をかけた。
     
     「そういえば今日両親いるの?」
     「いや、今日も仕事で海外だよ。」
     「忙しいんだね。・・・寂しくないの?」
     「別に。もう慣れた。っていうかもうそんな年でもないだろ。」
     
     久司の問いかけに湊都は苦笑混じりで答えた。
     
     自分が幼い頃から仕事で海外を飛び回っている両親。
     昔こそ寂しがっては泣いていたようだが、今はそんな年齢でもない。
     
     むしろ自由でいいくらいだ。
     
     あの両親のことだから、仮にいつも家にいたとしても自由にさせてくれそうだが。
     
     「それに毎日騒がしい俺達もいるしな!」
     「はは、そうだな。付き合うのも大変だよ。」
     「言ったなー!?」
     
     湊都の冗談に悪乗りした春瑠がヘッドロックをかけようとしたその時。
     
     「あーっ!はるはるがみないじめてるー!!」
     
     声が聞こえてきた瞬間。久司はすかさず時計を見た。
     21時10分。やはり得意技は健在だ。
     
     「みなの仕返しめちゃめちゃ陰湿なんだからやめといた方がいいよ!オレなんてこの前・・・」
     「いきなり出てきて失礼なやつだな。遅刻してきたくせに。遅刻するくらいなら来んな。」
     「うぅ・・・ごめんなさい。」
     「お前、ちょっとは学習しろよな。」
     
     今回も湊都の勝ち。隼人が湊都に口で勝てた試しがない。
     では力では勝てるのかと言うと、たぶん勝てないのだが。
     隼人の動きはパターン化されているため、付き合いの長い湊都には完全に読まれているのである。
     
     
     「やっとみんな揃ったね。これからどうするの?」
     「とりあえず部屋に荷物置くか。ついてきて。」
     
     湊都の先導で、今日寝る部屋へと行く。
     
     「楽しみーっ!」
     「寝る場所とか決めなきゃネ。」
     「アホの横はぜってーヤダ。」
     「ひど!」
     「まぁまぁ。やっぱりあみだかな?」
     「あ、ちなみに寝るのはダブルベッド二つ並べてだからー!」
     
     
     
     「「「は?」」」
     
     どさくさに紛れて何かが聞こえた。
     隼人と湊都を除く3人はすかさず湊都を見た。
     
     「このバカがうるさくて・・・しょうがなく。」
     
     実はこのお泊まり会が決定したとき、隼人は湊都にわがままを言っていた。
     それがあまりにうるさく、湊都は折れてしまったのである。
     
     
     この時隼人を除いた4人は思った。
     
     (寝る場所重要・・・?)
     
     
     
     
     
     
     
     
     これがお泊まり会の波乱の幕開けだった。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     つづく
     
     
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     あまりにも長くなりそうだったので切りました。
     なので続きます。なるべく早い内にアップできるよう頑張ります。
     
     2009.2.23