それは朝の登校時のこと。
隼人が教室へと向かっていると、後ろから声をかけられた。
「おはよう隼人!!」
「おはよう!って、え、みな?」
声の主は意外な人物で、隼人は驚きを隠せなかった。
いつも自分に対しては傍若無人なこの友人がこんなに高らかに挨拶するわけがない。
「何言ってんだよ、俺は俺だろ?」
「いや、それはそうなんだけど・・・」
「ほら、早く行かないと遅刻するぞ。」
(何かおかしい。ていうかおかしすぎる。)
「ってなことがあったんだよ!おかしくねぇ?」
「それホントにミナトだったの?」
1時間目が終わった後、隼人は凌のクラスへ行き、朝あったことを話した。
「ホントだよ!全身真っ黒だったし!」
「いや、そんな人世の中にいっぱいいると思うケド・・・。」
「とりあえずあれはみなだった!どうしよう、みながデレ期だ・・・!」
デレ期って・・・という凌の呟きは2時間目の始まりを告げるチャイムによってかき消された。
そして2時間目の休み時間。
隼人は4組へとやってきた。久司と春瑠にも朝のことの次第を話すためだ。
「ひさ兄はどう思う?」
「みなとがねぇ〜。何か変なものでも食べたんじゃないの?」
「あのみながぁ〜?信じられねぇ。」
確かにあの湊都が明るく隼人に話しかけるなど、天と地がひっくり返らない限りありえないことである。
たとえひっくり返ったとしてもありえないかもしれないが。
そして食事にも気を遣われているはずの湊都が何かおかしなものを食べたとも考えづらい。
「いいじゃん、かまってもらえて。」
「それはいいけど、あれは気持ち悪いって!オレ何かしたかなぁ〜?」
かまってもらえてうれしいんだ、と久司は心の中で呟いた。
「わがままだな。」
さっきまでいなかったはずの春瑠が急に会話に入ってきた。
「うわ、はるはる!」
「うわとは失礼な奴だな。」
「だっていきなり出てくるんだもん!なーなー、今日のみな何かおかしいんだって!」
「あぁ、湊都なら39度の高熱出してるぞ。それなのに学校来たらしい。あいつの執事からさっきメール来ててさ。」
思っていたよりも真実は簡単なものだった。
高熱を出しているから休めと使用人達は止めたそうだが、あまりの湊都の剣幕に押されてしまったらしい。
「え、まじで!?つか何で執事のメルアド知ってんの!?」
「あー、何かあったときに便利だから聞いたんだ。」
「えー、オレも知りたい!」
お前が知ってどうすんだ、と春瑠は隼人の頭を叩いた。
結構痛かったらしく、隼人は頭を抱えている。
「とりあえず湊都は帰らせた。あいつ気まぐれなくせに変なとこで負けず嫌いだからな。」
ホントは朝の時点で帰らせたかったんだけど、と春瑠はため息をつきながら言った。
「じゃあ今日はみないないのかー。あ、帰りにお見舞い行こうぜ!」
お前、絶対湊都の家に行きたいだけだろ・・・と久司と春瑠は同時に心の中で思った。
(三条湊都は高熱を出すと壊れるらしい。)
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湊都のキャラ崩壊が甚だしいですね・・・。
2008.12.3