昼休み。いつものように5人は屋上で一緒に昼食を食べていた。
     
     「あ、はる。今日帰り後ろ乗せて。」
     「いいけど、お前迎えは?」
     「今日はいい。そんな気分。」
     「・・・どんな気分だよ。」
     
     相変わらず気まぐれな湊都の言葉に春瑠が軽くツッコミを入れた。
     そしてそんな気まぐれに毎日付き合わされてる使用人達に同情した。そして自分にも。
     
     「今日はみなも一緒かー!!久しぶりだな!!」
       
     二人の会話を聞いていた隼人が突然会話に割り込んでくる。

     「誰もお前と帰るとは言ってない。それにその呼び方やめろ。」
     「えーいいじゃん。可愛くね?」
     「男に可愛さ求めてどうすんだよ、このバカが。」
     「ひっでー!オレはバカじゃねぇし!!」
     
     またいつもの喧嘩が始まった。何故かこの二人はいつも小競り合いを始めてしまうのだ。
     とはいえ、隼人が一人で喚いているだけで、湊都は軽くあしらっているに過ぎない。
     まぁ元はといえば湊都の口が悪いのが原因なのだが。

     「バカにバカと言って何が悪い。」
     「だからー!!」
       
     空気がだんだんと険悪になってきたが、他の3人はいつものことだ、と慣れた様子で黙々と昼食を食べ続ける。
       
     「オレはバカじゃねぇって!!な、しのしの?」
     「え!?・・・げほっ!」
     
     いきなり話を振られて驚いたのか、凌はむせてしまった。
     しかし、それに構うことなく二人はそれぞれに言葉を投げかける。
     
     「しの、この際ハッキリ言ってやった方がこいつのためだぞ。」
     「え、えぇ?」
     「しのしのはオレの味方だよなー?」
     「〜〜っ!ヒサシ!パス!!」
     
     耐え切れなくなった凌はついに久司に助け舟を求めた。
     
     「は?いきなり俺?つかしのぐ、大丈夫か?」
     「大丈夫・・・。」
     「それならいいけど。お前らいつも飽きないなー。」
     
     ここまで来ると逆に感心するよ、と久司はのんきなことを言いながら再び昼食に手をつける。
     止めないのかというツッコミはここでは無視である。

     「だってストレス発散だし。」
     「みなはいちいちひでーんだよ!!」

     なおもこの二人の喧嘩とも呼べない喧嘩は続く。

     「お前がそうやって反応するから湊都のおもちゃになるんだろ。」
     
     湊都が楽しんでるのがわかんねぇのかよ、と春瑠は小声で呟いた。
     それをかすかに聞いた隼人は春瑠にもつっかかっていく。
     
     「はるはるー?なんか言ったー?」
     「いーや?つかはるはるはやめろって。」
     「えー、いーじゃねぇかよー。」
     
     先ほどと同じような会話がまた繰り広げられ始める。
     
     「これエンドレス?」
     「さぁ?」
       
     当事者でなくなった湊都はおもちゃに飽きた子どものように興味も無い様子で久司に答える。
      
     「一番の被害者はやっぱオレ・・・」
     
     騒がしい輪の中で、凌は一人呟いた。
     
     こうしていつものくだらない言い合いは、昼休みの終わりを告げる予鈴がなるまで続くのであった。